鵜飼裕之

1992 年生まれ。滋賀県在住。　2011年より「やまなみ工房」に所属。

その大きな体で目を細めると一見強面で近寄りがたい男性の印象さえ抱く。
しかしこれまで出会った多くの人はファーストコンタクトで見事に期待を裏切られてきた。
「こーちょこちょ」彼は笑顔でそう呟き分け隔てなく関わりを求める。多くの言葉は必要ない。
お互いが仲良くなるため、理解し合うため、くすぐったりくすぐられたりは愛情を確認するため
最善のコミュニケーションなのかもしれない。
彼の言葉や表情はいつも笑いを生み、場を和ませる。
彼の表現は、厚紙に黒いボールペンで幾重にも円を描きこむ。
無造作に緻密にただ行為として繰り返されたかのような円。
バランスを計算したかのように大小様々にちりばめられた円。
厚紙は力のこもった円によりゴツゴツと波を打つ。
一気に仕上げる日、一つも描かない日、そんな彼がペンを持つと、
他を寄せ付けないオーラを放ち凄まじい集中力で指先に集中する。
問いかけにも知らぬ顔だ。いつ始めるかいつ完成なのかは彼にしか分からない。
彼に負けじと集中力を高め机に向かう。
足音が聞こえる。「こ～ちょこちょ」…今日も作品が出来た知らせが届いた。