河合由美子

1979年生まれ　滋賀県在住　1997年から『やまなみ工房』に所属

彼女は決まって午前と午後の作業時間前に「１０分。」と言って休憩時間をとる。
何をするでもなく、うっすらと頬笑みを浮かべながら自分の世界に浸り、かと思えば時に大泣きをする時もある。
お茶を飲んだり、通りかかった人に言葉遊びをしかけたりもする。
そして、自分の時間を味わった後、布と裁縫箱を用意し創作に取り組み始めるのだ。
彼女の刺繍は「まる」で構成されている。
初期の頃は魚や四角、三角の刺繍も見られたが、ここ５年間は「まる」のモチーフに傾倒している。
一枚の布地に迷うことなく「まる」をいくつも描き、
出発地点から斜めに返る独特の縫い方で輪郭をかたどっていく。
その上から何層にも円を描き糸を縫い重ねていくうち、
力によって収縮され平面だった「まる」は徐々に山のように隆起し、
ずっしりと重みのある、生命力に満ち溢れた作品となる。作業は非常に速いペースで進められるが、途中で糸を切ってしまう為、一つの形をつくり出すのに３カ月を要する。
その力強い作品は多くの人を魅了し、２００６年にアールブリュットabcdコレクションに収蔵されている。
２００７年よりスイスのアールブリュット・コレクション（スイス・ローザンヌ市）に収蔵されている。